天保4年(1833年)創業、約180年余りの歴史を持つ久須美酒造は、新潟県の中越地方の海岸部から少し中に入った三方をなだらかな丘陵が囲む、良寛和尚が生涯を終えた長岡市(旧和島村)にあります。蔵の裏山には樹齢300年を数える杉山があり、古くから杉山の下に名水が湧き出る言い伝え通りに蔵の井戸から、新潟県名水36に選ばれる水が懇々と湧き出て蔵の仕込み水として大切に使われ代表銘柄の「清泉(きよいずみ)」の由来となっています。こんな抜群の環境の中で代々地元の為に良酒を造りに励んでいましたが、1980年代地酒ブームにありながら、日本酒の将来を危惧した当時専務久須美記廸(のりみち)(後6代目社長・現会長)がある杜氏の会合で賞を外したことのない名杜氏の「亀の尾で造った吟醸酒が忘れられない」と言った言葉に浪漫を感じ、明治時代には多くの場所で作付けされた「亀の尾」ですが、農機具の機械化に合わせた稲の改良によりいつしか姿を消し、方々探しまわった末に種子センターに眠る僅か1500粒を分けてもらい、3年の時を経て昭和58年、純米大吟醸「亀の翁」として名杜氏の残した言葉よりも何倍の輝きを増し見事に復活を遂げ、その年の3大鑑評会金賞という大偉業を達成しました。
それをモチーフにして描かれた「夏子の酒」は多くの日本酒ファンに感動を与え、またこれにより日本酒に目覚めたという方もたくさん出来、TVドラマ化にもされ大きな反響を呼びました。
銘醸蔵の地位を確立した蔵ですが、平成16年の7.16水害で蔵の裏山が崩れ熟成中だった数万本の亀の翁が土砂の下敷きになり、さらに同年10.23中越地震、平成19年中越沖地震で併せて約5億円の大損害に見舞われ蔵の存亡の危機に瀕しましたが、その幾多の困難を乗り越えあくなき酒造りに邁進しています